会場:同志社大学今出川キャンパス 良心館 RY403教室(対面開催)
講師:清水貴夫(京都精華大学)
主催:グローバル地中海地域研究 同志社拠点 「多文化都市と共生の危機」研究班
共催:移民の参加と排除に関する日仏研究会
© Vix Mørá. "Senegal", Taken on August 31, 2008 (No change has been made)
在日(滞日/滞留)アフリカ人は、在日外国人の1%程度を占める程度で、これまでに日本の外国人問題として大きく扱われてこなかった。在日アフリカ人研究は、2000年代初頭から、名古屋大学(当時)の和崎春日の研究チームが先導し、その後、日本のアフリカ人研究は横浜国立大学の松本尚之が中心となり進められてきた。和崎らは、「在日」という枠組みから出発したが、アフリカ出身者のグローバルな動態に着目し、「アフリカーアジア」という枠組みでその動きを捉えるようになり、韓国やベトナム、中国(広州)で暮らすアフリカ出身者へと関心を移していった。在日アフリカ人研究開始当初は、アフリカの人びとがインフォーマルなネットワークを築く中で展開される、中古車ビジネスなど、ニッチな生業を営むことにより、グローバル化をブリコラージュする様を描いていった。
本発表では、こうした在日アフリカ人研究に立脚し、在日セネガル人の動態の変容に着目した、調査途上の事例を紹介する。これまでに、在日セネガル人は、特にミュージシャン、ダンサーなどエンターテイメント活動を生業とする事例が描かれてきた(たとえば、菅野淑/愛知淑徳大学)が、それはごく一部であり、多くのセネガル出身者は他のアフリカ出身者と同様にニッチな領域で生活を成り立たせていると考えられていた。しかし、2010年前後から、来日の動機は変化し、インフォーマルな領域に就業する者は減少し、留学生や正規のビジネスパーソンとして来日する者が多くなった。以前からセネガル出身者に独特なのは、ダーラ(学校)と呼ばれるイスラームの師弟関係で構築されたグループを基調とし、兄弟弟子が他の兄弟弟子を呼び寄せること、比較的古い時期から横浜の日本語学校との提携関係を結んだ来日エージェントが活躍し、日本語能力が高い者が多いことなどが挙げられる。こうした結果、在日セネガル人の多くが、日本の大学を卒業し、日本の企業に就職する、といったライフコースを取ることが散見される。本発表では、この来日ライフコースの通時的な変化を「セネガル人移民の三世代論」として提示したい。
明治学院大学国際学部卒。民間企業、NGO職員を経て名古屋大学大学院文学研究科博士課程後期満期退学。総合地球環境学研究所(「砂漠化をめぐる風と人と土」プロジェクト)研究員)、広島大学教育開発国際協力研究センター研究員、総合地球環境学研究所(「サニテーションの価値連鎖の提案:地域のヒトに寄り添うサニテーションのデザイン」プロジェクト研究員)、京都精華大学アフリカ・アジア現代文化研究センター設置準備室・研究コーディネーターを経て、現職(総合地球環境学研究所客員准教授を兼任)。 研究のキーワード:西アフリカ(ブルキナファソ、ニジェール、セネガル)、子ども、イスラーム、教育、食文化、環境(砂漠化問題、サニテーション)
(京都精華大学HPより転記)
森千香子
cmori@mail.doshisha.ac.jp